実直であることを貫き、品質に妥協をしない野口さんは信頼できます。

㈱若林佛具製作所 代表取締役社長
若林智幸様
  • 京仏壇・京仏具を世界でも

  •  当社の主な事業は仏壇・仏具の製作・販売です。仏壇はご家庭用で、荘厳具などの仏具や内装工事はお寺様からオーダーメイドでご注文いただきます。グループ会社の若林工芸舎ではお寺や神社、城郭などの文化財建造物の修理も行っています。
  •  創業は1830年。これまで約200年間、伝統工芸の職人たちと共に歩んできました。京仏壇・京仏具の製作工程は木地から始まって彫刻・漆塗・蝋色・金箔押・彩色など主に8工程、職種は20にも及び、当社はこれらを総合プロデュースしつつ、最後の総合組立という製作工程にも大事な出番があります。それぞれが独立した専門技術です。
  •  当社の大きな変化は先々代(祖父)のとき。それまで京都から出ることはほとんどなかったのですが、他府県で積極的にお寺様への訪問営業をするようになったのです。その成果があり、全国的にお仕事をいただけるようになりました。
  •  さらに五十数年前からは、アメリカなど海外からのご注文も増えました。日本人の方々が100年以上前から移り住み、その場所に各宗派の寺院が設けられているのです。特に北米の西海岸、ハワイに多く、現在は3、4世の方々が守っておられます。
  •  こうして今日まで当社があるのは、先代たちが築き、つないできたお客様や職人たちとの信頼関係があるからです。
  • 伝統を新しいものに活かす

  •  私が七代目に就任したのは2013年です。変化の激しい世の中であり、何かアクションを起こさなければ、衰退しかないことは目に見えていました。当社は職人の素晴らしい技術を継承するとともに、人々の心の拠り所となる「手を合わせる文化」を守り続けねばなりません。
  •  挑戦的な試みとしては、デザイナーやアーティストと組んで、職人の伝統技術を活かしながら新しいかたちの製品を開発し、2019年に東京で発表しました。職人の技術は古さだけに価値があるのではなく、新しいものも創造できるのだと世間に知っていただきたかったのです。デザイナーズ仏壇シリーズの「COYUI」や「KAKEHASHI」は現代の住まいにも溶け込むサイズで、インテリア家具のようなデザインです。
  •  仏壇の前で手を合わせる時間は心を落ち着かせ、素直な自分になる豊かなひと時。現代の人々には一層大切な習慣ではないでしょうか。それができる「場」である仏壇を身近に設けていただけたらと思っています。
  • 経営手法は変えても、ミッションは変わらない

  •  当社の本店の建物も、デザイナーと組み、リノベーションでイメージを一新しました。建物関連はすべて野口さんにお願いしており、この時も斬新なデザインをかなえる高度な施工技術を発揮してくださいました。特にファサードのうねりのある格子は難易度が高く、素材からさまざま検討されていたのには感心しました。
  •  野口さんはとにかく実直です。品質は絶対という姿勢で、嘘やごまかしが全くありません。「安いものには理由があります」と正直に話されるのです。これは施主や職人さんを大事にされていることの表れです。
  •  社屋や製品のかたちなど経営手法は変えても、当社のミッションは変わりません。新たな時代においても「朝に礼拝 夕に感謝」の社是のもと、「すべての人々の幸せと心のやすらぎを追求し、豊かな社会の実現に貢献すること」を目的に、事業に取り組んでまいります。