細部までこだわりたいので、職人気質の野口さんにいつもお願いしています。

㈱美十 代表取締役社長 CEO
酒井宏彰様
  • お菓子のおいしさは原材料の吟味から

  •  当社は1938年(昭和13年)、祖父が開いた喫茶店から始まりました。戦争でやむなく閉店しましたが、戦後、お菓子の小売業を立ち上げます。そして六十数年前に八つ橋のメーカーに転身。1966年(昭和41年)、生八つ橋でつぶあんを包んだ「おたべ」を発売し、現在は洋菓子、パンなどの事業にも取り組んでいます。
  •  当社は「おいしさをはこび よろこびを創る」を経営理念としています。おいしさの基本は原材料を吟味することです。特に生八つ橋のお米は大切で、、福井県と京丹後の契約農家さんからコシヒカリを仕入れ、自社の工場で、石臼でひいて製粉しています。
  •  原材料を育てる農業も深く勉強しました。生産者さんを年に4、5回は訪れ、様々なことを教えていただきます。「また忙しいときに来たな!」と言われながらも、一緒に飲みに行って話し込むのです(笑)。こうして築いた信頼関係が長く広くつながり、今の当社の製品があります。
  • 地元・京都への思い

  •  2008年(平成20年)、京都産の豆乳や宇治抹茶を使ったバームクーヘン「京ばあむ」を発売しました。なぜバームクーヘンかというと、私は木が大好きで、バームクーヘンはドイツ発祥の「木のお菓子」だからです。日本では建築や、京都の祇園祭の鉾などでも木が使われていますが、その力の偉大さ、奥深さにとても惹かれます。
  •  2023年(令和5年)には、南区の本社の隣に「atelier(アトリエ)京ばあむ」という施設を作りました。「抹茶miniばあむ」作りを体験できる他、見学できる工場、様々な種類の「京ばあむ」を置いている店や、「京ばあむ」を使ったオリジナルメニューのカフェなどがあり、季節のイベントにも力を入れています。
  •  「京ばあむ」は京みやげとして観光のお客様に人気ですが、「atelier 京ばあむ」では、ぜひ京都の皆様に召し上がっていただきたい、楽しいひと時を過ごしていただきたいと意気込んでいます。京都産の原材料にこだわることで、地域の生産者さんとのつながりができるのも嬉しく思っています。
  • 建物の細部まで本物を追求

  •  野口さんとは12年ほど前からのおつきあいです。知り合いに「京都の建築会社さんに頼みたいのですが、どこがいいですか?」と尋ねたところ、すぐに出てきた名前が野口さんでした。店舗・施設などをたくさんお願いしていて、「atelier 京ばあむ」も、もちろん野口さんに建てていただきました。
  •  野口さんには無理をお願いすることが多いのですが、「atelier京ばあむ」では着工寸前にコロナ禍となり、企画・設計内容が揺れ動いてしまいました。それでも嫌なそぶりも見せず対応してくださり、感謝しています。
  •  また、「京ばあむ」の、和洋折衷の独特の世界観を、建物の細部にわたって表現するという夢の実現にも、とことんつきあってくださいました。内部空間の中央に、本物の大きなトチの木をそびえ立たせたいという、工事の途中からのお願いは、その最たるものです。木材、コルク、和紙、畳などを巧みに使ったインテリアなども、腕の良いたくさんの職人さんと信頼関係を築いておられる野口さんだからこそ叶えてもらえたことです。
  •  当社の今後の目標は、おいしいお菓子づくりを通して、原材料の生産者と消費者をつなぐことです。よろこびの笑顔を全国に広げていけたらと願っています。