何もかも期待以上で、これからもいろいろとご相談したいですね。

㈱松葉 取締役社長

松野 泰治 様

  • にしんへのこだわりが味を守る

  •  当店の創業は江戸末期の文久元年(1861年)で、当初は今の北店のある北座で芝居茶屋を営んでいたようです。二代目のころにそば専門店となり、明治15年、名物・にしんそばを考案しました。南座の一角に移り、屋号を「松葉」と称したのもこの年です。常緑の松葉のように、いつまでも栄えるようにとつけたと聞いています。にしんそばに使う身欠きにしんは当時、北海道から北前船で若狭へ届き、鯖街道を通って、京都ではにしんなす等のおばんざいの材料に利用されました。それをヒントに、そばと組み合わせて生まれたのがにしんそばです。
  •  当店では、身欠きにしんを今も北海道の専門工場で乾燥・加工されたものを仕入れています。それを一度水で戻し、甘辛く炊き込んだのち、秘伝のタレに浸けて味を調えるわけで、小骨ごと食べられるのはそのためです。また、当店のにしんそばは、にしんを麺鉢の底にひいてお出しします。そのほうがにしんのタレが昆布出汁になじむからで、まずは出汁を飲み、その後ににしん、そばの順で食べていただくのがお勧めです。さらに、にしんうどんをぜひ一度試してください。細うどんが意外とにしんに合いますよ。
  •  多いときで一日二千尾、年間五トンのにしんを消費します。サイズは代々一定で、大きすぎたり、小さすぎるものは使いません。恥ずかしいものを出せばお客様に申し訳ないからで、希望するにしんが手に入らないと、にしんそばをご提供できないこともある覚悟でございます。
  • 北店が京都景観賞を受賞

  •  東京の老舗そば屋での修業を終えた私は、昭和51年、市営駐車場の北側の現在地に、手打ちそば・うどんの北店を開店しました。しかし、建物が老朽化し、耐震性に不安があったため、平成20年の新築でお世話になったのが、野口建設さんです。野口さんに決めたのは、親戚の「うなぎの松乃」から、何かあったら24時間対応してもらえるなどいい評判を聞いていたことと、私自身の目で野口さんの丁寧なお仕事ぶりを拝見する機会が過去にあったことです。
  •  お願いした結果は、何もかも期待以上でした。何より小さなトラブルやささいな不具合にもすぐに飛んできて対応してもらえるのは、店をしている者としては非常にありがたいことです。また、築5年して、私が「外から見えるように窓の桟を取り外したい」と相談すると、「これから味が出てくるからもう少し辛抱しましょう」などと、適切なアドバイスをしてもらえ、おかげで京都景観賞をいただきました。特に夕方、通りの向かいから建物を眺めると、実にきれいです。
  •  店内も落ち着いた雰囲気で、静かにゆっくりとおそばを食べていただけるため、そば通のお客様がよく来られます。二階に座敷を設け、北店だけのそば会席も始めました。夜には、板わさや卵焼き、そばみそをあてにお酒を楽しんでいただくこともできます。
  •  将来はお客様の目の前でそばをゆがき、揚げたての天ぷらをお出しする馬蹄型のカウンター店をつくりたいなど夢を描いています。野口さんとのおつきあいはまだまだ続きそうです。